第2回アプリケーションコンテスト 優秀作品 「THE LIFE」

第2回アプリケーションコンテストで優秀賞を頂きました関根です。

アプリケーションコンテストにエントリーした私の作品について紹介します。


※画像をクリックすると作品が別ウインドウで開きます。
HTML5対応ブラウザでご覧ください。

■表現としてのプログラム

脳科学者の茂木健一郎さんが研究をされている事で有名な「クオリア」という概念があります。

例えば『りんごの赤い感じ』、『素晴らしい音楽を聴いた時に受ける感動』、『日々感じる幸せ』など、脳の感じる感覚が持つ質感の事を「クオリア」と呼ぶそうです。そんなクオリアは私たちがどんなに筆舌を尽くしても相手に正確に伝える事はできません。ですから、自分が見ている「赤」と相手が見ている「赤」は、言葉や知識としては同じものでも、本当にお互いが同じ感覚を指して「赤い」と言い表しているかどうかはわからないし、確かめようが無いのです。

「表現」とはそのような伝える事のできない感覚を伝える手段であると教わった事があります。それは映画であったり絵画や音楽であったり、または言葉を駆使して言葉の外側を伝える方法であったり、様々な形で私たちの身の回りに溢れていますが、私もエンジニアとしてプログラムで何かを表現できないだろうかと考えた所からこの作品を着想しました。

■”ジレンマ”を演出する

初めは「芸術は爆発だぜ!!」と叫びながらまるで巨大なキャンバスにありったけのペンキをぶちまけたような本当にワケのわからないものを作ってやろうと意気込んでいたのに、ところがどっこいゲーム風味になってしまったのには理由があります。

「良い作品には必ず良いジレンマが込められている」

というのは私がこれまでジャンルを問わず様々な表現に触れて感じてきた事で、映画でも音楽でも本でも、作品が心に沁み込む浸透圧はジレンマの濃度で決まるんじゃないかと考えた事がありました。というのはただ私が個人的にそういうのが好きなだけだったりもするのですが、とにかくそういったものを込めるという意味においてゲームはまさにうってつけの題材だったのです。

ジレンマというのは例えば「地球を救うために誰かが犠牲にならなければならない」と か 「敵のボスが実は主人公の父親だった」とか「仕事と私どっちが大事なの!?」みたいな事を言うのですが、日頃いかに便利で使い易いものを作るかという事を 考えている我々にとって、そんな風にシステムの「思い通りに動かない」部分を追及する機会なんて、コンテストでも無ければなかなか出会えません。
便利さを追い求める事はもちろん大切ですが、それだけでは考えが凝り固まってしまうと思うんです。意味の無いもの、不便さを面白さとして楽しめるもの、そ ういった理屈だけでは太刀打ちできない領域に思いがけない成長の鍵が隠れているかもしれない。その可能性を探せる事がアプリケーションコンテストの一つの 醍醐味なのだと思っています。

■<canvas>タグを自由な想像のキャンバスに

ゲーム作りのノウハウはほとんど持っていないにも関わらずこんな事を言って良いものかわかりませんが、これくらいの規模のお手軽ゲームを作る上で最も難しいのは、プログラミングよりもむしろルール作りの方だという事には薄々勘付いておりました。

A.スコアを稼ぐために雪が集めなければならない。
B.雪を集めている間世界の寿命がどんどん減る。

A.青い生物により大きな赤い生物を食べさせたい。
B.赤い生物を大きくし過ぎると逆に青い生物が食べられてしまう。

などの背反的な制約をいくつか散りばめてはいるのですが、核心の部分は数字の増減ではなくもっと違った方法で表したかったのに、そうできなかったのは私の想像力の至らなかった所です。ゲームデザインの難しさを知りました。くやしいのでいつかリベンジしてもっと良いものを作ってやろうと思います。その時はきっとこのブログで公開すると思いますので乞うご期待です!

ところで、このアプリは画像等は一切使わず全て<canvas>タグの描画メソッドのみで動いています。こんな具合にHTML5はちょっと目を引く処理が簡単に書けます。特別な開発環境は無くても大丈夫ですし、ブラウザ一つあれば動くので誰でもすぐに作れます。

こういう類で何か作りたいものがあって、具体的なイメージも固まっているけどどのプラットフォームで作ったらいいかわからなくてイマイチ踏み出せないという方は、HTML5で作ってみるのがこれからは一番手軽に実現できるのかもしれません。是非試してみてください。